第1節 - 呉用

第5巻 第3章 第1節
北方に築かれし双頭の砦

この節の概要

呉用は、梁山泊の北方の要衝として、北京大名府に圧力をかける位置に新たな拠点「双頭山」の構築を開始する。同行する朱仝と雷横は梁山泊への直接合流を強く望むが、呉用は北方の同志を糾合し、北京大名府を牽制する拠点の重要性を説いて二人を説得する。官庁の常識に縛られ武器の不足を懸念する二人に対し、呉用は遼軍から武器を買い付けるという、官軍出身者には思いもよらぬ独自の調達ルートを提示する。山寨の建設が急ピッチで進む中、滄州の柴進から早馬が届き、消息を絶っていた魯智深に関する重大な知らせがもたらされる。飲馬川の鄧飛が単身で女真族の地から魯智深を救出し、渤海を渡って生還したという報に、呉用たちは歓喜に沸く。さらに、飲馬川の孟康が約束を大幅に上回る大量の武器を携えて到着し、北方の戦力は着実に整い始める。

主要人物

呉用(ごよう)

  • 綽名:智多星(ちたせい)
  • 所属:梁山泊
  • 役割:軍師・施政担当
  • 初登場:第1巻 第1章 第4節
  • 元は東渓村の私塾教師であったが、晁蓋や宋江の志に共鳴し、梁山泊の頭脳としてあらゆる智恵を振り絞る。冷静沈着に全体の動きを把握し、冷酷な判断も厭わない職責を自認しているが、内面ではかつての平穏な生活への郷愁や大それた事への恐怖を抱える一面もある。

朱仝(しゅどう)

  • 綽名:美髯公(びぜんこう)
  • 所属:梁山泊
  • 役割:北方拠点(双頭山)の指揮官
  • 初登場:第1巻 第1章 第1節
  • 元は済州鄆城県の騎兵隊長であったが、宋江らの逃亡を助けて軍を脱し、梁山泊側に合流した。一尺以上の美しい髭が自慢の、男らしく小気味よい性格の武将だが、時に粘り強さに欠ける面がある。

雷横(らいおう)

  • 綽名:挿翅虎(そうしこ)
  • 所属:梁山泊
  • 役割:北方拠点(双頭山)の指揮官
  • 初登場:第1巻 第1章 第1節
  • 元は鄆城県の歩兵部隊の将校で、朱仝と共に宋江の志を支えてきた。親分肌で部下に慕われる熱い性格であり、官軍出身ゆえに武器の調達など現実的な軍備を重んじる。

孟康(もうこう)

  • 綽名:玉幡竿(ぎょくばんかん)
  • 所属:飲馬川(梁山泊協力者)
  • 役割:武器調達・輜重
  • 初登場:第5巻 第2章 第3節
  • 北の国境を越えた飲馬川の山寨を守る頭領のひとりで、鄧飛の弟分である。呉用の依頼を受け、遼軍の砦から武器を買い叩いて調達する任務を粘り強く完遂する才覚を見せた。

登場人物の関係

graph LR
    呉用 ---|主従| 朱仝
    呉用 ---|主従| 雷横
    朱仝 ---|義兄弟| 雷横
    孟康 -->|後援| 呉用
    柴進 -->|情報提供| 呉用
    劉唐 -->|信頼| 呉用

地名・拠点

名称種類説明
双頭山(そうとうざん)山寨岩山と平らな丘が二里ほどの距離で並び立つ地。北京大名府に圧力をかけ、北方の同志を募るための梁山泊の出城。
滄州(そうしゅう)拠点柴進の屋敷があり、北方への塩の道と情報の要衝となっている。

用語リスト

用語読み説明
双頭山そうとうざん呉用が命名した新しい拠点の名称。岩山と丘が互いに援け合うことで少数の兵でも多勢に対抗できる構造を象徴している。
早馬はやうま至急の知らせを届けるための馬。柴進から魯智深生存の報を呉用に届けるために放たれた。

歴史・文化背景

官軍出身者は「武器は上から支給されるもの」という固定観念が強いが、梁山泊は敵国である遼軍から賄賂や商取引によって武器を買うという柔軟かつ大胆な発想で軍備を整えていた実態が描かれている。国境を越えた武器の売買は、北宋と遼が表向き和平を維持しながらも、実際には双方の腐敗した将兵が私利のために禁制品を流通させていた時代の闇を映し出している。

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