第3節 - 王英

第9巻 第3章 第3節
黎明の城壁と静かなる脱走

この節の概要

冀州に潜伏する柴進は、青蓮寺の監視を潜り抜け、重要人物四人と大量の銀で造られた「檻車」を運び出すという極めて困難な任務に直面している。王英は救援依頼を受け、武松や李逵と共に官軍の目を欺くための大胆な囮作戦を立案する。作戦は銀の檻車を蔡福の囚人護送に紛れ込ませて先に城外へ出し、その後王英たちが四人の逃亡者に成り済まして官軍を引き付けるというものだ。兵站や秘密輸送のプロフェッショナルである王英は、仲間の特質を活かしつつ不確実な「運」をも計算に入れた緻密な手筈を整えていく。夜明け前の静寂の中、組織の資産を守り抜くための銀の檻車の移送と、命懸けの脱出劇が幕を開ける。

主要人物

王英(おうえい)

  • 綽名:矮脚虎(わいきゃくこ)
  • 所属:梁山泊(飛竜軍指揮官)
  • 初登場:第1巻 第3章
  • 潜入や秘密輸送の任務に特化した飛竜軍を率いる。仲間の性格や能力を熟知しており、過酷な任務においても「運」を引き寄せるための周到な準備を怠らないプロフェッショナル。

柴進(さいしん)

  • 綽名:小旋風(しょうせんぷう)
  • 所属:梁山泊
  • 初登場:第1巻 第4章
  • 後周の皇帝の末裔で梁山泊の財源を支える重要人物。冀州で青蓮寺の執拗な包囲網に苦慮しながら塩の道の資産を回収する陣頭指揮を執っている。

武松(ぶしょう)

  • 綽名:行者(ぎょうじゃ)
  • 所属:梁山泊
  • 初登場:第1巻 第4章
  • 圧倒的な武勇を誇る孤高の豪傑。隠密行動や夜襲においてもその卓越した身体能力を発揮し、王英の囮作戦において重要な実戦部隊を担う。

李逵(りき)

  • 綽名:黒旋風(こくせんぷう)
  • 所属:梁山泊
  • 初登場:第4巻 第3章
  • 二挺の板斧を振るう恐るべき闘士。意外にも料理を得意とする繊細な一面も持ち合わせる。王英を苦手としつつも実力は認めており、作戦の要所でその圧倒的な武力を振るう。

蔡福(さいふく)

  • 綽名:鉄臂膊(てっぴはく)
  • 所属:官軍(北京大名府・牢役人)
  • 初登場:第9巻 第3章 第1節
  • 北京大名府の牢役人で囚人護送の責任者。梁山泊の協力者として自身の立場を利用して銀の檻車を城外へ運び出す。

登場人物の関係

graph LR
    王英 ---|同志| 柴進
    柴進 ---|協力| 蔡福
    王英 ---|友| 武松
    武松 ---|友| 李逵
    阮小二 ---|同志| 王英
    蔡福 ---|兄弟| 蔡慶

地名・拠点

名称種類説明
冀州(きしゅう)城郭都市軍が駐屯し青蓮寺の監視が強化されている。柴進が潜伏し銀の檻車の運び出しと重要人物の脱出を計画する舞台。

用語リスト

用語読み説明
檻車かんしゃ囚人を護送するための檻を備えた車。本節では表面を汚して正体を隠した「銀製の檻車」が財宝輸送の手段として用いられる。
板斧はんぷ李逵が愛用する大型のまさかりのような武器。乱戦において凄まじい威力を発揮する。

歴史・文化背景

「檻車」を用いた輸送は官のシステムを逆手に取った梁山泊らしい戦術である。当時の中国において囚人護送は不衛生かつ忌避される任務であり、役人以外は近づきたがらない。この心理的死角を突き、高価な銀を泥で汚して檻車に仕立てるという発想は、経済感覚と実務能力に長けた柴進や王英の特質をよく表している。

→ 次の節(第9巻 第3章 第4節)

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