第3節 - 呼延灼

第10巻 第1章 第3節
鉄塔より望む開封府の黄昏

この節の概要

代州の将軍・呼延灼が、宰相・蔡京の呼び出しを受けて帝都・開封府を訪れる。かつての上官であり現在は青蓮寺の首脳となっている呉達と再会し、梁山泊討伐の指揮を執るよう促される。呼延灼は腐敗した中央政府や皇帝への失望を抱えつつも、軍人としての本分を果たすべく童貫元帥と対面し討伐軍の編制に合意する。しかし、その条件として皇帝の名代・高俅が全軍の指揮権を持つという政治的妥協が組み込まれていた。呼延灼は若き俊英・趙安とともに鉄塔に登り、繁栄の裏側で傾きゆく国の将来と北方に台頭する女真族の脅威について静かに語り合う。

主要人物

呼延灼(こえんしゃく)

  • 綽名:双鞭(そうべん)
  • 所属:官軍(代州の将軍)
  • 初登場:第1巻 第5章
  • 宋建国の功臣・呼延賛の末裔で皇帝の放漫な浪費と政治の腐敗に絶望し国境警備を志願して禁軍を離れた過去を持つ。私欲のために動くことはなく、純粋に武人として「国を守る」ことを自らの責務と考える高潔な男。

童貫(どうかん)

  • 綽名:なし
  • 所属:官軍(禁軍元帥)
  • 初登場:第1巻 第1章
  • 元宦官でありながら卓越した軍事的才能を持ち禁軍を精強な組織へと鍛え上げた冷徹な現実主義者。呼延灼のような真の武人を高く評価する。

趙安(ちょうあん)

  • 綽名:なし
  • 所属:官軍(禁軍の上級将校)
  • 初登場:第9巻 第5章
  • 童貫にその才能を見出された若き武官。正義感と忠誠心が強く、力によって国を立て直すという理想を抱く。呼延灼を兄のように慕いその生き様に憧憬を抱いている。

呉達(ごたつ)

  • 綽名:なし
  • 所属:その他(青蓮寺)
  • 初登場:第2巻 第2章
  • かつては呼延灼の上官として軍にいたが現在は青蓮寺の幹部として情報工作や軍事の調整を担う。呼延灼を高く評価し彼を梁山泊討伐の場へと導く。

登場人物の関係

graph LR
    呼延灼 ---|信頼| 童貫
    呼延灼 ---|友| 趙安
    呉達 -->|信頼| 呼延灼
    童貫 -->|主従| 趙安
    高俅 -->|監視| 呼延灼
    蔡京 ---|主従| 童貫

地名・拠点

名称種類説明
開封府(かいほうふ)北宋の首都。物は溢れ繁栄を極めているが役人の小銭稼ぎが横行するなど腐敗も進んでいる。
鉄塔(てっとう)史跡開宝寺にある十三層の石塔。頂上からは開封府を一望でき、呼延灼が屈託を吹き飛ばすためによく登る。

用語リスト

用語読み説明
儀仗兵ぎじょうへい本来は式典などで皇帝を護衛する兵。高俅の軍はこの名目で実戦から遠ざかっていたが梁山泊討伐を機に実戦への介入を狙う。
轟天雷ごうてんらい凌振の綽名。彼が操る強力な大砲を象徴する呼び名。

歴史・文化背景

当時の北宋では、徽宗皇帝の趣味「花石綱」(全国から奇石を運ばせる事業)などによる財政圧迫と蔡京による独裁的な政権運営が民衆の不満を呼んでいた。また北方の国境では女真族(のちの金)が遼を圧倒しつつあり、軍人たちの間では大陸規模の情勢変化に対する危機感が高まっていた。

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