第1節 - 凌振

第10巻 第2章 第1節
鍛冶場の火と未知なる鉄の棒

この節の概要

北京大名府の郊外にある軍営にて、砲隊の指揮官である凌振が新型火砲の開発と新兵の調練に没頭している。彼は従来の重すぎる砲を野戦でも運用できるよう軽量化を目指しているが、薄くした砲身が爆発の衝撃で破損する問題に直面し鉄の質そのものに限界を感じている。開発に行き詰まりを感じながら外城の居酒屋を訪れた際、凌振は端整な顔立ちの謎の男から驚異的な弾力を持つ一本の鉄の棒を見せられる。男はその鉄が凌振が将来戦うことになる勢力の技術であることを示唆し、再会を予感させながら姿を消す。凌振は手にした未知の技術に衝撃を受け、武人としての闘志と技術者としての情熱をさらに燃え上がらせることになる。

主要人物

凌振(りょうしん)

  • 綽名:轟天雷(ごうてんらい)
  • 所属:官軍(北京大名府軍管区・砲隊指揮官)
  • 初登場:第10巻 第2章 第1節
  • 宋国随一と言われる火砲の専門家。幼少期に聞いた砲の音に魂を揺さぶられて以来人生のすべてを砲の研究に捧げてきた妥協を許さない職人気質な性格。軍部が砲を単なる攻城兵器と見なしている現状に強い不満を抱き野戦での火砲運用を目指す。

登場人物の関係

graph LR
    童貫 -->|後援| 凌振
    謎の男 -->|挑発| 凌振

地名・拠点

名称種類説明
開封府(かいほうふ)北京大名府の郊外の軍営で凌振の砲隊が駐屯し火砲の試射や研究が行われている。

用語リスト

用語読み説明
火砲かほう火薬の爆発力を利用して弾を飛ばす兵器。当時の技術では鋳造による重いものが主流。
硝石しょうせき火薬の主原料の一つ。凌振はこれに工夫を加えることで弾の威力を向上させている。
投石機とうせきき重りや人力の反動で石を飛ばす兵器。火砲に比べて構造は単純だが命中精度や運搬の面で課題がある。

歴史・文化背景

北宋時代、火薬を用いた兵器の開発は徐々に進んでいたが、その主な用途は城攻めや威嚇、あるいは皇帝の前での儀式的なデモンストレーションに留まっていた。凌振が目指す「野戦での火砲運用」は当時の軍事常識からすれば極めて先進的かつ困難な挑戦であり、それを支える高度な冶金技術の欠如が国家の軍事力の壁となっていた。

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