第5節 - 柴進

この節の概要
済州を訪れた兵站総責任者の柴進は、孫二娘の店で過労と体調不良を訴える。後周皇帝の末裔としての矜持と、梁山泊で得た「志」という心の血について静かに語る柴進だったが、突如として意識を失い倒れてしまう。急報を受けた裴宣は沈着冷静に事態を掌握し、十四挺櫓の高速船を仕立てて柴進を梁山泊の安道全のもとへと急送する。安道全と薛永による必死の診断の結果、柴進の病状は単なる疲労ではなく、何者かによる長期間の毒殺工作によるものであることが判明する。事態の深刻さと背後に潜む裏切者の存在に気づいた孫二娘は、夫である裴宣に危機を知らせるため、不吉な予感を抱きながら済州へと馬を走らせる。
主要人物
柴進(さいしん)
- 綽名:小旋風
- 所属・役割:梁山泊・兵站・物資調達の総責任者
- 初登場:第1巻 第3章 第3節
後周の皇帝の末裔であり、滄州に広大な屋敷を構えていた貴族。梁山泊に加わってからは膨大な物資と資金を管理する重責を担い、実務家としての非凡な才能を発揮している。自身の血筋よりも仲間と共に歩む「志」を重んじる、高潔な精神の持ち主である。主要な人間関係:宋江や盧俊義を志の師として仰ぎ、孫二娘や裴宣に対しても深い信頼を寄せていた。
孫二娘(そんにじょう)
- 綽名:母夜叉
- 所属・役割:梁山泊・済州の拠点運営・情報収集
- 初登場:第10巻 第3章 第1節
かつて十字坡で居酒屋を営んでいた女傑。済州で食堂を切り盛りしながら、潜伏する同志たちの世話や物資の監視を担っている。現在の夫である裴宣との平穏な暮らしを大切にしており、仲間を想う情愛は人一倍強い。主要な人間関係:裴宣とは互いに補い合う深い絆で結ばれており、柴進の異変に際して真っ先に裴宣を頼る。
裴宣(はいせん)
- 綽名:鉄面孔目
- 所属・役割:梁山泊・済州・鄆城の統括責任者
- 初登場:第1巻 第5章 第3節
元は京兆府の公正な司法官。現在は済州の役所に身を置きつつ、裏から街の秩序と兵站の要衝を守っている。危急の際にも動じず的確な指示を出す指揮能力の持ち主であり、その厳格な態度の裏に妻への深い慈しみを秘めている。
安道全(あんどうぜん)
- 綽名:神医
- 所属・役割:梁山泊・養生所(病院)の責任者
- 初登場:第1巻 第7章 第4節
建康府出身の稀代の名医。梁山泊の将兵の命を救う最後の砦であり、医学的な探求心と観察眼は他の追随を許さない。柴進の未知の病状に対し、弟子の薛永と共に血液の分析を行うなど科学的なアプローチで真相に迫る。
登場人物の関係
graph LR
孫二娘 ---|夫婦| 裴宣
裴宣 -->|信頼| 柴進
孫二娘 -->|介抱| 柴進
安道全 ---|同志| 薛永
安道全 -->|診察| 柴進
柴進 ---|同志| 宋江
柴進 ---|盟友| 盧俊義
柴進 -->|信頼| 呉用
地名・拠点
| 地名 | 種別 | 解説 |
|---|---|---|
| 済州(さいしゅう) | 拠点 | 梁山泊の膝元に位置する城郭都市。柴進が兵糧集積所とするべく大規模な倉を建設していた |
| 金沙灘(きんさたん) | 拠点 | 梁山泊の正面玄関にあたる砂浜。養生所(病院)への搬送ルートとして使用された |
| 双頭山(そうとうざん) | 拠点 | 梁山泊の支城。安道全の弟子である毛定が派遣されている |
用語リスト
| 用語 | 読み | 解説 |
|---|---|---|
| 夜盗樹 | やとうじゅ | 喬木の根から抽出される希少な毒物。無味無臭で血を破壊し、心臓を狂わせる |
| 十四挺櫓 | じゅうよんちょうろ | 通常の船に予備の櫓を追加した、緊急輸送用の高速船 |
歴史・文化背景
柴進が言及する「大周の王家の血」とは、宋朝(北宋)の前に存在した後周(こうしゅう)の皇帝一族であることを指す。宋の建国者である趙匡胤は、後周の皇帝から禅譲(位を譲り受けること)を受けた際、その子孫を保護することを誓った。そのため、柴進の家系は宋朝廷からも聖域として認められていたが、彼はその安泰を捨てて梁山泊の志を選んだのである。
不吉な予感を抱えたまま済州へ駆け戻った孫二娘は、郊外の牛の囲いで、力なく寄りかかるようにして息絶えている裴宣の姿を見つける。争った形跡はなく、その首筋にはごく小さな傷があるのみだった。柴進の毒殺と時を同じくして最愛の夫までも奪われた孫二娘は、この地に潜む見えない敵の存在を確信する。
💡 しおりをセットすると、登場人物ページやホバーポップアップのネタバレ表示が制御されます。読んだ範囲の情報のみが表示されます。
