第1節 - 龔旺

第17巻 第4章 第1節
要塞二竜山、迫りくる静かなる脅威

この節の概要

二竜山の最前線で防御の指揮を執る龔旺は、二ヶ月に及ぶ趙安軍の執拗かつ緩やかな攻撃に不気味さを感じている。趙安軍は正面の防御を一枚ずつ剥がすような攻め方を続けており、後方には童貫軍の酆美が控え、野戦を封じ込めている。軍議の席で、楊春は敵が防御線の中に新たな寨(とりで)を築き、長期戦に持ち込む構えであると予測する。総隊長の秦明や副官の郝思文もその予測を支持し、犠牲を抑えるための持久戦を説くが、前線に立つ龔旺や鄒潤は、じわじわと追い詰められる現状に苛立ちを募らせる。そんな中、鄒潤は命令違反にならぬ範囲での「反撃」を画策し、若き将校・郝瑾を伴って龔旺の陣を訪れる。

主要人物

龔旺(きょうおう)

  • 綽名:花項虎
  • 所属・役割:梁山泊・二竜山の前線防備指揮官
  • 初登場:第14巻 第4章 第4節

元は遼州呉家荘の小作の息子で、幼馴染の張清と共に傭兵稼業を営んでいた。張清を深く信頼し、彼が正しいと判断した梁山泊での戦いに没頭している。実直な武人であり、二竜山の上級将校たちの器量に敬意を払いつつも、守勢に回る現状に武者震いする一面を持つ。

秦明(しんめい)

  • 綽名:霹靂火
  • 所属・役割:梁山泊・二竜山総隊長
  • 初登場:第6巻 第2章 第3節

かつて青州の兵馬総管を務めた猛将。現在は二竜山の責任者として、冷静に敵の意図を分析し、兵力を無駄に消耗させないための戦略を練っている。過去の苦い経験から野戦の危険性を熟知しており、部下の逸る気持ちを抑えつつ、大局的な判断を下す指導者である。

鄒潤(すうじゅん)

  • 綽名:独角龍
  • 所属・役割:梁山泊・二竜山上級将校
  • 初登場:第8巻 第1章 第4節

猟師出身の豪傑で、額に大きな瘤があるのが特徴。双頭山で戦死した兄・鄒淵の仇を討ちたいという強い思いがあり、籠城を続ける戦略に納得できず、野戦や積極的な反撃の機会を求めている。不器用だが率直な物言いをする性格で、龔旺とは気脈が通じている。

郝思文(かくしぶん)

  • 綽名:井木犴
  • 所属・役割:梁山泊・二竜山副官
  • 初登場:第7巻 第4章 第1節

関勝の義兄弟として知られる理知的な将校。穏やかだが軍紀には厳しく、部下の失敗を二度繰り返させないよう徹底した指導を行う。秦明の参謀役として、敵の長期戦の構えを冷徹に見極めている。

登場人物の関係

graph LR
    秦明 -->|主従| 龔旺
    秦明 -->|主従| 郝思文
    龔旺 ---|同志| 鄒潤
    鄒潤 -->|上官| 郝瑾
    張清 ---|信頼| 龔旺

地名・拠点

地名種別解説
二竜山(にりゅうざん)山塞梁山泊の重要拠点の一つ。本山の他に桃花山、清風山を擁し、梁山泊の兵を調練して送り出す使命も担っている
流花寨(りゅうかさい)山塞童貫軍との激戦が展開された梁山泊側の防衛ライン近辺

用語リスト

用語読み解説
防御ぼうぎょ二竜山の正面に築かれた三十枚の防護壁や陣地。一枚剥がされるごとに敵が山に近づく仕組みとなっている
さい城砦や砦のこと。趙安が梁山泊側の防御の中に強引に築こうとしている拠点を指す
兵站へいたん前線の部隊に食糧や武器を補給する仕組み

歴史・文化背景

二竜山で議論されている「薄皮を剥がすような攻め」は、強固な要塞を陥落させるための定石である。宋代の攻城戦において、相手の防御施設を一つずつ破壊しながら自軍の拠点を前進させていく戦術は、時間はかかるものの、包囲側の損害を最小限に抑え、確実に敵を窒息させる効果があった。

→ 次の節(第17巻 第4章 第2節)

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